「お墓購入を考え始めたけれど、何から手をつければいいのだろう」。初めてのことで、どんな順番で進めるのか、いつまでに決めればいいのか、契約で失敗しないかと不安を感じる方は多いでしょう。一周忌が近づいている、あるいは子どもに負担を残さないよう生前に準備したいなど、急ぎ具合が家庭ごとに違うことも迷いを深めます。
そこで本記事では、お墓購入の流れを7つのステップに分け、区画と墓石の2つの契約で何を確かめればよいかを順番に整理します。法要から逆算した時期の目安もわかるので、今週やることを具体的に決められるはずです。
あわせて、生前に用意する場合の税金や管理料の考え方も、同じ流れで紹介します。
お墓購入は区画と墓石の2つの契約
お墓を用意するときは、霊園や寺院と結ぶ「区画の使用権の契約」と、石材店と結ぶ「墓石の工事の契約」の2つを交わします。土地を買うわけではなく、区画を使う権利を得て、そこに墓石を建てるという仕組みです。
2つの契約の違いは次のとおりです。
| 契約 | 相手 | 主に払うもの |
|---|---|---|
| 区画の使用権 | 霊園・寺院 | 使用料・毎年の管理料 |
| 墓石の工事 | 石材店 | 墓石代・工事費 |
樹木葬や納骨堂では墓石を建てないため、霊園や寺院との契約だけで済む場合もあります。
買うのは土地ではなく区画の使用権
「お墓を買う」と言われますが、実際には土地の所有権は移らず、区画を使う権利を取得する契約です。厚生省(現・厚生労働省)の指針では、契約時に払う使用料を「墓地の使用権を取得するために必要な料金」とし、「永代使用料」と呼ばれることも多いと説明しています。
同じ指針が示す標準的な契約の例でも、「永代」は永久に使えるという意味ではないとされています。管理料を長く払わないと契約を解除されることがあるため、使える期間と条件は契約書で確かめましょう。
墓石は石材店と別に契約する
一般墓では、区画の契約とは別に、石材店と墓石の工事の契約を結びます。日本石材産業協会が認定する「お墓ディレクター」の相談Q&Aでは、大きさや石の種類、予算、納期を話し合い、見積書と完成予想図をもらってから工事契約書を交わすのが正しい流れだと回答しています。
霊園によっては、墓石を建てられる石材店が決まっていることもあるでしょう。区画を決める前に、どの石材店に頼めるかも確かめておくと、あとで慌てずに済むでしょう。
名義人と継ぐ人を先に決めておく
契約の前に、誰を名義人にするか、将来誰が継ぐかを家族で決めておきます。民法では、お墓は普通の遺産とは別に、祖先の祭祀を主宰する人が受け継ぐと定められ、亡くなった人が指定すればその人が継ぎます。決まらないときに定めるのは家庭裁判所です。
名義人が亡くなったときは、継ぐ人が霊園に届け出て名義を変える手続きが必要です。費用を誰が出すかもあわせて話しておくと、のちの行き違いを防げます。
お墓購入の流れは7つのステップ
お墓購入は、家族での話し合いから始まり、情報集め、見学、区画の契約、墓石の契約と工事、法要、納骨の7つのステップで進みます。区画と墓石を別々に決めるので、それぞれの契約書を確かめながら進めましょう。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. 話し合い | 種類・場所・予算・継ぐ人 |
| 2. 情報集め | 資料請求・公営の募集時期 |
| 3. 見学 | 区画・設備・使用規則 |
| 4. 区画の契約 | 申込書・使用料の支払い |
| 5. 墓石の契約・工事 | 見積書・図面・工事契約書 |
| 6. 法要 | 寺院や宗派に合わせて依頼 |
| 7. 納骨 | 埋葬許可証を霊園に出す |
家族で希望と予算を話し合う
最初に、どんな種類のお墓にするか、どこに建てるか、予算はいくらまでか、誰が継ぐかを家族で話し合います。はせがわが2024年7月に、直近5年以内にお墓を建てた・移した人とこれから検討する人、計600人(全国の40〜79歳)へインターネットで行った調査では、重視する点として「立地・アクセスの良さ」を58.0%、「費用面」を56.3%が挙げていました。
お参りに通う家族の住まいと、無理のない予算を先に決めておくと、候補を絞りやすくなります。種類の違いは「お墓の種類を比較|一般墓・永代供養墓・樹木葬・納骨堂の違いと選び方」で紹介しています。
資料請求と見学で候補を比べる
候補の霊園が見つかったら、資料を取り寄せ、2〜3か所を見学して比べるのがおすすめです。公営霊園は募集の時期が決まっているので、都道府県や市区町村のページで日程を確かめておきましょう。
見学では、区画の広さや日当たりのほか、駐車場や水場、坂や段差など、お参りのしやすさを見ます。あわせて使用規則を受け取り、管理料や石材店の決まりも確かめておくと安心です。
区画の申し込みと契約をする
区画を決めたら、申込書を出して使用料を払い、区画の使用権を取得します。公営霊園では、住民票や遺骨の埋葬許可証などで資格を審査してから使用料を納め、使用許可証が届く流れが一般的です。
厚生省(現・厚生労働省)の指針は、契約書とは別に重要な事項を書面にして説明し、利用者が納得したうえで契約できるようにすることを求めています。説明が足りないと感じたら、書面での説明を頼みましょう。
墓石は見積書・図面・工事契約書をそろえる
一般墓では、区画の契約のあとに石材店と墓石の内容を決め、見積書・完成予想図・工事契約書の3つをそろえてから契約します。日本石材産業協会が認定するお墓ディレクターの相談Q&Aには、契約書がないまま内金を払い、納期が延び続けたという相談も寄せられています。
工事契約書には、完成の予定日、支払いの時期、キャンセルしたときの扱いが書かれているかを確かめましょう。公営霊園では、工事の前に霊園への申請が必要な場合もあります。費用の内訳は「お墓を建てる費用はいくら?相場と内訳・安く抑える方法を解説」が参考になります。
完成後に法要をして納骨する
仏式では、墓石が完成したら寺院に頼んで法要をしてから納骨するのが一般的です。法要の名前や考え方は宗派によって違い、神式では別のおまつりをするので、お付き合いのある寺院や神社に確かめましょう。
納骨の日には、火葬済みの印が押された火葬許可証(一般に「埋葬許可証」と呼ばれる書類)を霊園に出します。法律で、墓地の管理者は許可証を受け取らないと納骨させてはならないと定められているためです。納骨の時期や流れは「納骨はいつまで?時期・流れ・費用と必要書類をやさしく解説」で詳しく紹介しています。
当サイトでは全国7,000件以上の霊園・墓地・永代供養・樹木葬・納骨堂の情報を、都道府県・市区町村別に掲載しています。費用の目安やアクセスから比較できます。
墓じまいを検討中の方:地域別の墓じまい費用・補助金
お墓を買う時期と完成までの期間
お墓を用意する時期に法律上の決まりはなく、四十九日や一周忌などの法要を目安に納骨する家庭が多いようです。公営霊園は募集から使えるようになるまで数か月かかるため、目標の法要から逆算して動き始めましょう。
納骨に法律上の期限はない
遺骨をいつまでにお墓に納めなければならないという決まりは、法律にはありません。東京都保健医療局も、自宅での遺骨の保管について特に規定はないと説明しています。
石材店から「早く建てないと」とすすめられても、家族の気持ちが落ち着いてから考えてかまいません。急いで契約せず、見学や見積もりで比べる時間をとりましょう。
四十九日や一周忌に合わせる家庭が多い
真宗大谷派は、納める日の決まりはないとしたうえで、多くの地域では四十九日の法事のあとに納めることが多いと説明しています。新しくお墓を建てる場合については、葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子さんが、一周忌や三回忌の法要に合わせて納骨するケースが多いと解説しています。
一般墓は区画の契約から墓石の完成まで時間がかかるため、四十九日に間に合わないことも珍しくありません。その場合は、いったん自宅で遺骨を保管し、完成後に納骨しても問題ありません。
公営霊園は募集から使えるまで数か月かかる
公営霊園は、募集から使えるようになるまで数か月かかります。2026年度の都立霊園では、6〜7月に申し込み、8月に抽選、12月に使用許可証が届く予定です。
都立霊園は抽選のため、申し込んでも当たらないことがあります。倍率は一般墓などで2.4倍、合葬埋蔵施設で6.4倍でした(東京都の2026年8月の発表)。
また、東京都霊園条例は、許可を受けてから3年以内に遺骨を納めるよう定めています(2025年9月の東京地裁判決が引用した規定)。公営霊園では、使えるようになったあとの期限も確かめておきましょう。
お墓の契約前に確かめたい4つのこと
契約前には、解約したときに使用料が戻るか、石材店を選べるか、宗派や管理料の条件、クーリング・オフが使えるかの4つを確かめます。区画の契約は解約しても使用料が戻らないのが原則なので、書面で納得してから申し込みましょう。
見学や契約のときに確かめたい点を表にまとめました。
| 確かめること | 見る書類 |
|---|---|
| 解約時の返金の決まり | 使用規則・契約書 |
| 指定石材店の有無 | 使用規則・霊園の説明 |
| 宗派・檀家の条件 | 使用規則・契約書 |
| 管理料と改定のルール | 契約書・重要事項の書面 |
| 墓石の納期と支払い条件 | 工事契約書 |
| 納骨までの期限 | 使用規則・募集の案内 |
解約しても使用料は原則戻らない
区画の使用料は、解約しても戻らないのが原則です。厚生省(現・厚生労働省)の指針が示す標準的な契約の例でも、使用者はいつでも解約できるものの、払った使用料と管理料の返還は求められないとされています。墓石も遺骨もまだ入れていない場合に限り、契約から一定期間内なら使用料の一部を返すという例外の形も示されています。
ただし、霊園によっては一部が戻る決まりもあるので、確かめておく価値はあるでしょう。川崎市の市営霊園では、許可を受けてから3年以内に返すと使用料の半額が戻ります。都立霊園では、許可から3年以内に納骨せず使用許可を取り消された人の家族(相続人)が使用料の返還を求めた裁判で、2025年9月に東京地裁が請求を退けました。
指定石材店と相見積もりの可否
霊園によっては、墓石を建てる石材店が決まっている「指定石材店」の仕組みがあります。厚生省(現・厚生労働省)の指針は、民営霊園について石材店を選ぶ余地を全く奪ってしまう契約は適切でないとしていますが(法的な拘束力のない国の助言)、寺院墓地などでは指定があることも少なくありません。
指定があるか、何社から選べるか、ほかの石材店と見積もりを比べられるかを、見学のときに確かめましょう。指定がある場合も、見積書と図面をもらって内容を確かめることが大切です。
宗派・檀家の条件と管理料の改定
寺院墓地や寺院が経営する霊園では、宗派の条件や、檀家になることが求められる場合があります。浄土真宗では檀家を「門徒」と呼ぶこともあります。檀家になると、お寺を支えるための護持会費を毎年納めるのが一般的です。
2017年に国民生活センターが公表した紛争解決の事例には、「宗派不問」の広告を見て契約した人たちが、管理する会社が替わったあとで、檀家になる義務と管理料(寺院側は護持会費と説明)の値上げを求められたものがあります。宗派の条件と管理料を改める決まりは、契約書や使用規則で確かめておきましょう。檀家の仕組みは「檀家とは?メリット・かかる費用・やめる方法をやさしく解説」で紹介しています。
クーリング・オフが使えない契約も多い
霊園の事務所や石材店の店舗に自分から出向いて結んだ契約は、原則としてクーリング・オフの対象になりません。国民生活センターによると、クーリング・オフで書面を受け取った日から8日間解約できるのは訪問販売や電話勧誘販売などで、訪問販売には路上などで誘われて店で契約するキャッチセールスなども含まれます。
自宅への訪問や電話の勧誘で墓石を契約した場合も、対象になることがあります。一方、区画の使用権は、法律でクーリング・オフの対象として挙げられている権利に入っていません。迷ったときや困ったときは、消費者ホットライン「188」に相談しましょう。
生前にお墓を買うときに知っておくこと
生前にお墓を用意すれば、自分で場所や形を選べるのが利点です。墓地や墓石には相続税がかかりませんが、代金が残っているとその分を遺産から差し引けない点には注意が要ります。一方で、管理料は使い始めた年から毎年かかり、公営の一般墓のように遺骨がないと申し込めない区分もあります。
生前に建てるお墓は寿陵と呼ばれる
生前に建てるお墓は「寿陵(じゅりょう)」と呼ばれ、古くから縁起がよいとされてきました。自分で場所や墓石の形を選べるうえ、残された家族が慌ててお墓を探す負担も減らせるでしょう。
生前の契約では没年月日がまだわからないため、墓石や樹木葬のプレートに名前だけを先に彫ることもあります。生前の契約では、彫刻や納骨のときに何をするかを契約書で確かめておきましょう。
墓地や墓石に相続税はかからない
墓地や墓石は、相続税がかからない財産です。国税庁は、墓地や墓石、仏壇、仏具など日常礼拝をしている物には相続税がかからないと案内しています。
ただし、生前に契約したお墓の代金が残ったまま亡くなった場合、その未払い分は遺産から差し引けません。生前に建てるなら、支払いも生前に済ませておくのが一つの考え方です。相続税がかかるかどうかは家庭によって違うため、具体的な判断は税理士や税務署に相談しましょう。
管理料は使い始めた年からかかる
生前にお墓を用意すると、納骨する前から毎年の管理料を払うことになります。都立霊園の場合、口座振替なら管理料の引き落としは毎年7月末です。
都立霊園では、年間の管理料を5年以上払わないと使用許可の取り消しの対象になります。早めに区画の使用権を取得するほど管理料を払う期間が長くなるので、払い続けられるかも考えておきましょう。
公営の一般墓は遺骨がないと申し込めない例も
公営霊園の一般墓は、遺骨が手元にあることを申し込みの条件にしている場合があります。2026年度の都立霊園では、一般墓の申し込みに都内5年以上の居住と、申し込む遺骨の祭祀の主宰者であることなどが条件です。居住地の条件や、改葬の遺骨を申し込めるかも霊園ごとに異なるので注意が必要です。
一方で、都立霊園の合葬埋蔵施設や樹林型合葬埋蔵施設には、生前に申し込める区分があります。生前に公営霊園を考えるなら、募集の案内で区分ごとの条件を確かめましょう。
お墓購入についてよくある質問
墓石の工事期間や支払いの時期、ローン、宗派ごとの法要について、よく出る疑問をまとめました。
墓石の工事にはどのくらいかかりますか
石の種類や産地、加工の内容、霊園の工事の受付時期で変わるため、一律の目安はありません。法要に合わせたい日があるなら、工事契約書に完成の予定日を書いてもらいましょう。
お墓の代金はいつ誰に払いますか
区画の使用料は霊園や寺院に、墓石代は石材店に払います。公営霊園の使用料の納め方は自治体ごとに違い、たとえば川崎市の市営霊園は、使用許可の前に指定の金融機関で一括して納めます。墓石代は、着手金と完成後の残金に分けて払う例もあるので、工事契約書で支払いの時期を確かめましょう。
お墓はローンで買えますか
石材店や霊園によっては、ローンを紹介しているところがあります。川崎市の市営霊園も、融資を希望する人に指定の金融機関を紹介しています。ただし、生前に契約したお墓のローンが残ったまま亡くなると、その分は相続税の計算で遺産から差し引けません。
浄土真宗や神道では納骨のときに何をしますか
浄土真宗では魂を入れるという考え方をとらないため、開眼の法要とは呼び方や考え方が違います。神道では、遺骨を納めるときに「埋葬祭」というおまつりを行います。どちらも、お付き合いのある寺院や神社に確かめてから日程を決めると安心です。
まとめ
お墓購入は、霊園や寺院との区画の契約と、石材店との墓石の契約の2つで成り立ちます。家族で希望を話し合い、見学で比べ、使用規則と契約書で返金・石材店・宗派・管理料の条件を確かめてから申し込めば、契約後の行き違いを防げるでしょう。
まずは家族で場所と予算、継ぐ人を話し合い、気になる霊園の資料を取り寄せることから始めてみてください。
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