「家族に迷惑をかけたくないから、エンディングノートを書いておきたい」。そう思って手に取っても、何から書けばよいのか、遺言書とは何が違うのか、迷って手が止まる方も多いはずです。葬儀やお墓のことをどこまで書けば家族が困らないのかも、悩みどころでしょう。
そこで本記事では、エンディングノートに書く8つの項目と、それぞれの書き方をお伝えします。特に家族が困りやすい葬儀とお墓の欄は、お墓の場所や名義など手続きに使う情報まで一覧にしたので、そのまま書き写せます。
あわせて、無料で手に入るノートと、書いた後の保管や家族への伝え方も、同じ流れでまとめました。
エンディングノートと遺言書の違い
エンディングノートは家族に情報と希望を伝えるためのノートで、遺言書のような法的な効力はありません。財産を誰にどう分けるかを自分で決めておきたいときは、遺言書を別に作る必要があります。
家族に情報と希望を残すためのノート
エンディングノートは、もしものときに家族が手続きや判断に困らないよう、必要な情報と自分の希望をまとめておくノートです。法務省と日本司法書士会連合会が作ったノートも、家族が様々な判断や手続きを進めるときに必要な情報を残すもの、と説明しています。
決まった形式はなく、書く順番も自由です。法務省のノートは、これまでの人生を振り返り、これからを考えるきっかけにもなると位置づけています。
実際に書いている人は、まだ多くありません。日本財団が2022年11月に全国の60〜79歳2,000人へインターネットで行った調査では、遺言書の準備状況を聞いた質問で「遺言書は作っていないがエンディングノートは作った」と答えた人は4.5%でした。
財産の分け方を自分で決めるなら遺言書
エンディングノートに「長男に家を」と書いても、法的な効力は生まれません。民法は、遺言は法律で決められた方式に従わなければできないと定めているからです。
相続分の指定や、遺言で財産を渡す「遺贈」(相続人以外の人にも渡せる)は、遺言書でしかできません。自分で書く自筆証書遺言は、今の法律では全文・日付・氏名を手書きし、印を押す必要があります。
東京都豊島区のノートも、法的効力を求めるなら遺言書の作成が必要だと明記しています。財産の分け方に希望があるなら、ノートと遺言書を両方そろえておくと安心です。
遺言書を作ったらノートに保管場所を書く
遺言書を作ったら、その種類と保管場所をエンディングノートに書いておきましょう。遺言書があっても、見つからなければ役に立たないためです。
自筆の遺言書は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」で1通3,900円で預かってもらえます。希望すれば、亡くなったことが確認された時点で、指定した人(3人まで)に遺言書があることを法務局が知らせてくれます。
終活全体の流れや遺言書の種類は、「終活とは?やることリスト7項目と始め方」もあわせてご覧ください。
エンディングノートに書く項目と書き方
エンディングノートには、基本情報・連絡先・財産と契約・医療と介護・デジタル情報・葬儀とお墓・遺言・メッセージの8つを書いておくと、家族が困りにくくなります。全部を一度に埋める必要はなく、書けるところから始めれば十分です。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 基本情報 | 氏名・本籍・宗教や宗派・菩提寺 |
| 連絡してほしい人 | 親族・友人・かかりつけ医 |
| 財産と契約 | 預貯金・保険・年金・不動産・借入 |
| 医療と介護 | 病名の告知・延命治療・介護の場所 |
| デジタル情報 | スマホ・ネット銀行・サブスク |
| 葬儀とお墓 | 葬儀の形式・お墓の場所と希望 |
| 遺言 | 有無・種類・保管場所 |
| メッセージ | 家族や友人への言葉 |
この8つは、法務省と日本司法書士会連合会のノートや、自治体が配るノートの多くに出てくる項目です。葬儀とお墓の書き方は、次の章で詳しく取り上げます。
基本情報ともしものときの連絡先
基本情報には、氏名や生年月日に加えて、本籍と宗教・宗派、お付き合いのあるお寺(菩提寺)を書いておきましょう。本籍は相続の手続きで戸籍を集めるときに、宗派や菩提寺は葬儀の準備に使われます。
連絡先は、入院など「もしものとき」、「葬儀のとき」、「葬儀の後」のどの時点で知らせてほしいかを分けて書くと、家族が迷いにくくなります。豊島区のノートも、連絡する時期(生前・葬儀・事後)を選んで書く形です。
友人の連絡先は、家族が知らないことも少なくありません。内閣府の高齢社会白書(2024年)は、横須賀市の終活情報登録に残された友人の連絡先で、葬儀の知らせが届いた例を紹介しています。
財産と契約は「どこにあるか」を書く
財産の欄は、金額よりも「どこに何があるか」を書くことを優先しましょう。銀行名と支店名、保険会社と証券の保管場所、年金の種類、不動産の所在地が分かれば、家族は手続きを始められます。
キャッシュカードの暗証番号やクレジットカードの番号はノートに書かないでください。静岡市のノートも、悪用されるおそれがあるとして記入しないよう注意しています。
見落としやすいのが、毎月お金が引き落とされる契約です。公共料金、携帯電話、クレジットカード、新聞や動画配信などのサブスクを一覧にしておくと、家族が解約の手続きを進めやすくなるでしょう。借入やローンがあれば、それも書いておきましょう。
医療と介護の希望は人生会議とあわせて
医療と介護の欄には、病名や余命を知らせてほしいか、延命治療を望むか、どこで介護を受けたいかを書きます。意識がない状態では自分の希望を伝えられないため、前もって書いておく意味が大きい項目です。
あわせて取り組みたいのが、厚生労働省が勧める「人生会議」です。望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・介護の専門職と繰り返し話し合って共有する取り組みを指します。
厚生労働省が2022年11月〜2023年1月に一般の人3,000人から郵送とWebで回答を得た調査では、人生の最終段階の医療について考えたことがある人は51.9%、家族などと話し合ったことがある人は29.9%にとどまりました。ノートに書いたら、それをきっかけに家族やかかりつけ医と話してみましょう。
スマホとネットのサービスの残し方
スマホとネットのサービスは、家族が後から調べにくい項目です。国民生活センターは2024年に、故人のスマホのロックが解除できずネット銀行の口座を確かめられない、IDが分からずサブスクの請求を止められない、といった相談例を紹介しています。
スマホやパソコンのロック解除のパスワードについて、同センターは、名刺大の紙に書いて修正テープを重ねて貼る方法や、家族にだけ分かる合言葉で書く方法を紹介しています。ノートには、使っているサービス名とIDの一覧を書いておきましょう。
パスワードをそのまま書くと、ノートが人の手に渡ったときに悪用されるおそれがあります。Appleの「故人アカウント管理連絡先」のように、亡くなった後にデータへアクセスできる人を指名しておける仕組みもあります。
葬儀とお墓の希望を書くときのポイント
葬儀とお墓の欄は、希望だけでなく、家族が手続きに使う情報(お墓の場所・管理者・名義、契約書の保管場所、費用の準備)まで書くのがポイントです。お墓を継ぐ人の希望は、遺言書でも指定しておきましょう。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| お墓の場所 | 霊園やお寺の名前・区画番号 |
| 管理者の連絡先 | 霊園の管理事務所・お寺 |
| 使用者の名義 | 名義人の氏名 |
| 書類の保管場所 | 使用許可証・契約書・領収書 |
| 入りたいお墓 | 先祖の墓・永代供養墓・樹木葬など |
| 費用の準備 | 用意した金額と預け先 |
法務省と豊島区のノートのお墓の欄に、家族が手続きで使う情報を加えた一覧です。お墓をまだ持っていない人は、下の3つだけでも書いておきましょう。
葬儀の形式と規模・費用の出どころ
葬儀の欄には、一般葬・家族葬・一日葬・火葬のみといった形式、呼んでほしい人の範囲、宗教・宗派、費用をどこから出すかを書きます。葬儀社と生前契約をしていれば、その会社名と契約書の場所も欠かせません。
予算の目安まで書いておくと、家族が葬儀社と打ち合わせるときの助けになります。国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた葬儀サービスの相談は2025年度に917件で、「家族葬50万円」の表示を見て頼んだら総額200万円を超えた、といった例も報告されました。
同センターは、葬儀の希望やイメージを前もって考えて情報を集めること、打ち合わせは複数人で行うことを勧めています。ノートに希望と予算があれば、家族は落ち着いて見積もりを比べられるでしょう。
今あるお墓の場所・管理者・名義
すでに家のお墓があるなら、場所と区画番号、管理事務所やお寺の連絡先、使用者の名義、使用許可証などの保管場所を書いておきます。子や孫の世代は、お墓の正確な場所や管理先を知らないこともあります。
名義も大切な情報です。墓じまいなどで遺骨を移す改葬の手続きでは、申請する人がお墓の使用者でない場合、使用者の承諾書が必要になります(墓地、埋葬等に関する法律施行規則)。
使用者が亡くなった後は、名義を変える手続きも必要です。都立霊園では、承継の申請から名義変更の事務処理までに約2か月かかると案内されています。墓じまいの手続きの流れは「墓じまいの手続きと必要書類」もあわせてご覧ください。
入りたいお墓や供養の形とその理由
自分が入りたいお墓は、先祖代々のお墓、新しく建てるお墓、永代供養墓、樹木葬、納骨堂、散骨、手元供養などから希望を書き、選んだ理由も添えます。理由があると、家族が迷ったときの判断の手がかりになるはずです。
永代供養墓や合祀墓を選ぶ場合は、他の人と一緒に納める合祀を一度すると、遺骨を取り出せないことも知っておきましょう。散骨も撒いた遺骨は戻らず、場所によっては条例の制限があります。どちらも取り返しのつかない選択なので、希望を書くときは家族や親族とも話し合っておきましょう。散骨の場所の決まりは「散骨できる場所はどこ?」で詳しく取り上げました。
すでに区画の使用権を取得している場合は、契約書の保管場所と、費用を払い終えているかどうかも書いておくと家族が助かります。
お墓を継ぐ人の希望は遺言書でも残す
お墓や仏壇を受け継ぐ人(祭祀承継者)は、民法897条により、本人が指定した人がいればその人が継ぎます。指定がなければ慣習で決まり、慣習もはっきりしなければ家庭裁判所が決める流れです。
法律の専門家の解説では、指定の方法に決まりはないとされ、エンディングノートに書いた希望も手がかりになり得ます。ただしノートには法的な効力がないため、家族の意見が分かれそうなら、遺言書でも指定しておくと安心です。
墓地によっては、使用規則で承継できる人を親族に限っていることもあります。親族以外に託したい場合は、霊園やお寺に条件を確かめてから書きましょう。
当サイトでは全国7,000件以上の霊園・墓地・永代供養・樹木葬・納骨堂の情報を、都道府県・市区町村別に掲載しています。費用の目安やアクセスから比較できます。
墓じまいを検討中の方:地域別の墓じまい費用・補助金
エンディングノートを無料で手に入れる方法
エンディングノートは、法務省のサイトや市区町村の窓口で無料で手に入ります。まず無料のノートで書き始め、使いにくければ市販のノートやアプリに移すのも一つの方法です。
| 手に入れ方 | 入手先 | 特徴 |
|---|---|---|
| 法務省のノート | 法務省のサイト | 無料・印刷して使う |
| 市区町村のノート | 役所や地域包括支援センター | 無料・地域の相談先が載る |
| 市販のノート | 書店や文具店 | 書き込み欄が多い |
| アプリ | スマホのアプリストア | 書き直しやすい |
自治体のノートは配る期間や部数が決まっていることがあるため、窓口へ行く前にサイトで確かめておきましょう。
法務省のノートはサイトから無料で使える
法務省は、日本司法書士会連合会と作った『エンディングノート〜あなたに届け、わたしの想い〜』をサイトで無料公開しています。PDFを印刷すれば、すぐに書き始められるのが利点です。
基本情報、連絡先、財産、デジタルデータ、遺言書の保管場所、介護と延命治療、葬儀、お墓まで一通りの欄があります。お墓の欄では、先祖代々のお墓・永代供養・散骨・樹木葬などから希望を選べる形です。
後半には、2024年4月に義務になった相続登記や、自筆証書遺言書保管制度の解説も載っています。国民生活センターも2024年のデジタル終活の注意喚起の中で、このノートを紹介しました。
市区町村の窓口で配るノート
独自のエンディングノートを無料で配る市区町村もあります。地域の相談窓口や支援制度が一緒に載っているのが、自治体のノートの良いところです。
たとえば静岡市は市役所や地域包括支援センターで配布し、Word版とPDF版をサイトからダウンロードできるようにしています。東京都豊島区の「終活あんしんノート」は、区の終活あんしんセンターで書き方の相談もできる仕組みです。
福岡市の「マイエンディングノート」(2026年6月発行)のように、人生の振り返りから葬儀・お墓・遺言の欄まで1冊にまとめたものもあります。中身は自治体によって違うため、お住まいの市区町村のサイトで「エンディングノート」と検索し、葬儀やお墓の欄があるかを確かめてみましょう。
市販のノートやアプリを選ぶときの目安
市販のノートやアプリを選ぶときは、書く欄の多さよりも、最後まで続けられそうかを目安にします。欄が多すぎると、途中で手が止まりやすいためです。
あわせて、葬儀とお墓の欄が細かく分かれているかも確かめましょう。お墓の場所や名義、入りたいお墓の希望を書く欄があると、前の章で紹介した情報を残しやすくなります。
アプリは書き直しやすい一方、家族がスマホを開けなければ中身を見られません。アプリを使うなら、スマホのロック解除の方法とあわせて、どのアプリに書いたかを家族に伝えておきましょう。
書いた後の保管と家族への伝え方
書き終えたエンディングノートは、自宅の決まった場所に置き、その場所を信頼できる人に伝えておきます。あわせて、年に1回は見直して更新した日を書いておくと、内容が古くなりません。
保管場所を信頼できる人に伝えておく
エンディングノートは、もしものときに見つけてもらえなければ役に立ちません。家族や信頼できる友人の1〜2人に、ノートがあることと保管場所を伝えておきましょう。
伝える相手がいない人は、自治体の終活情報登録も使えます。神奈川県横須賀市の「わたしの終活登録」や東京都豊島区の終活情報登録(区内在住の65歳以上の人などが対象)では、エンディングノートの保管場所を無料で登録でき、もしものときに病院や本人が指定した人などに伝えてもらえる仕組みです。
厚生労働省の資料(2025年2月)では、同じような登録事業を行う15の自治体が紹介されています。お住まいの市区町村に制度があるか、窓口で聞いてみるとよいでしょう。
貸金庫より自宅の決まった場所に置く
エンディングノートは、銀行の貸金庫ではなく、自宅の決まった場所に保管するのが向いています。契約者が亡くなった後の貸金庫を開けるのに、相続人全員の立ち会いや委任状を求める金融機関があり、葬儀までに中を見られないおそれがあるためです。
個人情報が多いノートなので、人目につく場所は避けます。パスワードのヒントや財産の細かな情報は別の紙に分け、保管場所を変えておくと、ノートが人の手に渡ったときの心配を減らせます。
持病や飲んでいる薬などの医療の情報は、救急のときにすぐ見つかる場所が大切です。豊島区は、かかりつけ医や服薬を書いた用紙を容器に入れて冷蔵庫に保管する「救急医療情報キット」を紹介しています。
年に1回見直して更新した日を書く
エンディングノートは一度書いて終わりではなく、年に1回ほど見直しましょう。豊島区のノートも、定期的に内容を見直し、書き直したら更新日を書くよう勧めています。
見直しのきっかけには、誕生日や年末年始などの節目を使うとよいでしょう。厚生労働省は11月30日を「人生会議の日」とし、年末年始やお盆のように家族が集まる機会に、医療やケアの希望を話し合うことも勧めています。
引っ越しや入院、お墓の契約など、暮らしが変わったときも見直しの合図です。古い情報のままだと、家族がかえって迷いかねません。
エンディングノートのよくある質問
エンディングノートについてよく出る疑問に、公的な情報をもとに短く答えます。
エンディングノートは何歳から書けばよいですか
何歳から書くという決まりはなく、思い立ったときが始めどきです。病気や認知症で判断力が落ちると自分の希望を書けなくなるため、元気なうちに書き始めると安心です。若い人でも、連絡先や契約の一覧は役に立ちます。
途中で挫折しないコツはありますか
書きやすい項目から始め、空欄が残ってもよいと考えることです。基本情報や連絡先のように事実を書くだけの欄から埋め、医療やお墓のように考える時間が要る欄は後に回しましょう。鉛筆で下書きすると、書き直しも気楽です。
親にエンディングノートを勧めるには
「書いてほしい」と頼むより、自分も一緒に書くと切り出しやすくなります。お盆や年末年始など家族が集まる時期に、お墓や実家の話題から自然に入るのも一つの方法です。厚生労働省も、こうした機会に医療やケアの希望を話し合うことを勧めています。
パソコンで作ったり代筆したりしてもよいですか
エンディングノートには決まった形式がないため、パソコンで作っても、家族が聞き取って代わりに書いてもかまいません。ただし自筆の遺言書は、今の法律では財産目録を除いて全文を本人が手書きする必要があるため、ノートとは分けて考えましょう。
遺言の法改正でノートの扱いは変わりますか
2026年6月に公布された民法の改正で、自筆の遺言書の押印を任意にすることや、パソコンで作った遺言を法務局が預かる「保管証書遺言」の新設が決まりました。施行日はまだ決まっていませんが、押印の任意化は2027年6月まで、保管証書遺言は2029年6月までに始まる予定です。改正は遺言の方式の話で、エンディングノートに法的な効力がない点は変わりません。
まとめ
エンディングノートは、家族に情報と希望を伝えるためのノートで、亡くなった後の財産の分け方を自分で決めておくには遺言書が必要です。基本情報から書き始め、葬儀とお墓の欄にはお墓の場所・管理者・名義と、入りたいお墓の希望まで残しておくと家族が迷わず済みます。
まずは法務省やお住まいの市区町村の無料ノートを手に入れ、書けた日付を記入しましょう。お墓に迷ったら、供養先を比べてから書けます。
当サイトでは全国7,000件以上の霊園・墓地・永代供養・樹木葬・納骨堂の情報を、都道府県・市区町村別に掲載しています。費用の目安やアクセスから比較できます。
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