「子どもにお墓の管理を残したくないから、自然葬にしたい」。そう考えても、樹木葬と散骨は何が違うのか、法律に触れないのか、家族に反対されないか、気がかりは尽きないのではないでしょうか。自然葬という言葉の意味から迷う方もいます。費用がどのくらいかかるのかも、なかなか分かりにくいところです。
そこで本記事では、自然葬の種類ごとの違いと費用の目安をお伝えします。樹木葬はお墓、散骨はお墓ではないという法律上の違いから順に整理するので、遺骨を取り出せるかやお参りの形まで同じ物差しで比べられます。
あわせて、選ぶ前に確かめたいことと、墓じまいした遺骨を移す手続きも、同じ流れでまとめました。
自然葬とは遺骨を自然に還す葬り方の総称
自然葬とは、墓石を建てずに遺骨を海や山、樹木の下などの自然に還すことを願う葬り方の総称です。もともとは散骨を指す言葉でしたが、今は樹木葬も含めて呼ばれることが多くなっています。
墓石を建てずに自然へ還すことを願う葬り方
自然葬は、特定の1つの方法ではなく、遺骨を自然に還す葬り方をまとめて呼ぶ言葉です。デジタル大辞泉は、墓を建てず粉状にした遺骨を山や海にまいて自然に還ることを願う葬法と説明し、樹木葬も「自然葬の一」としています。
一方、ブリタニカ国際大百科事典は、日本では散骨を指すのが一般的だとしています。つまり、狭い意味では散骨、広い意味では散骨と樹木葬の両方を指す言葉です。
どちらも墓石がなく、跡継ぎを前提にしない点が共通しています。ただし後の章で説明するとおり、法律上の扱いは樹木葬と散骨で大きく違うので注意しましょう。
1991年の相模灘での散骨が始まりとされる
「自然葬」という言葉が広まったきっかけは、1991年に市民団体の「葬送の自由をすすめる会」が神奈川県の相模灘で行った散骨だとされています。同会は散骨を「自然葬」と呼び、1997年の旧厚生省の懇談会でもそう説明しました。
当時、法務省が「節度をもって葬送の一つとして行われる限り違法ではない」との考えを示したと報じられました。ただし、地方自治研究機構は、国がこの見解を公式な文書で示したものは確認できないとしています。
総合研究大学院大学の論文(2012年)は、同会の自然葬が2009年8月までに山・海・空などで計2,501人に行われたと紹介しました。
樹木葬は1999年に墓地として始まった
樹木葬は、1999年に岩手県一関市の祥雲寺(現・知勝院)が、市の許可を受けた墓地として始めたのが最初とされます。墓石の代わりに低木を植え、その下に遺骨を埋める方法でした。
大阪大学の紀要に載った論文(本林靖久、2021年)によると、樹木葬は散骨の運動に刺激を受けながら、法律で認められた墓地の中で行う形として生まれました。その後、東京都も2012年に小平霊園で「樹林墓地」の募集を始めるなど、公営の霊園にも広がっています。
樹木葬が「お墓」として始まったことは、後で説明する遺骨の取り出しや手続きの違いにもつながります。
自然葬の種類と樹木葬・散骨の違い
自然葬の主な種類は、樹木葬・海洋散骨・山林散骨の3つです。いちばん大きな違いは、樹木葬が法律上の「お墓」に遺骨を埋めるのに対し、散骨は遺骨を粉にして撒くため、お墓にはならない点です。
| 種類 | 場所 | 法律上の扱い | お参り |
|---|---|---|---|
| 樹木葬 | 許可を受けた墓地 | お墓への埋蔵 | 区画や樹木に参る |
| 海洋散骨 | 陸から離れた沖合 | 法律に定めなし | 散骨した海へ行く |
| 山林散骨 | 承諾を得た山林 | 法律に定めなし | 決まった場所なし |
| 空からの散骨 | 上空 | 法律に定めなし | 決まった場所なし |
| 宇宙葬など | 宇宙や成層圏 | 国の基準なし | 決まった場所なし |
散骨した遺骨は取り戻せません。樹木葬でも、ほかの人の遺骨と一緒に埋める合祀の区画では、一度合祀した遺骨は取り出せなくなります。
樹木葬は許可を受けた墓地に遺骨を埋める
樹木葬は、樹木や草花を墓石の代わりにして、その下に遺骨を埋めるお墓です。墓地埋葬法は遺骨を埋めることを墓地以外の場所で行ってはならないと定めており、樹木葬は都道府県知事などの許可を受けた墓地の中で行われます。
形は霊園によってさまざまです。山林を墓地にした里山型のほか、都市の霊園でシンボルツリーの周りに埋める型もあります。都立霊園の樹林墓地は、遺骨を直接土に触れる形でほかの人と一緒に埋める仕組みです。
一方で、骨壺のまま区画に納め、一定期間がたってから合祀する霊園もあります。一度合祀した遺骨は取り出せません。樹木葬の種類や選び方は「樹木葬とは?」もあわせてご覧ください。
海洋散骨は粉にした遺骨を沖合でまく
海洋散骨は、遺骨を粉状に砕いてから、陸から離れた沖合の海にまく方法です。利用も増えており、日本海洋散骨協会の加盟事業者による散骨は、2025年(1〜12月)に6,690件でした。
厚生労働省のサイトに載っている散骨事業者向けのガイドライン(2021年)は「海岸から一定の距離以上離れた海域」とするだけで、距離の数値はありません。業界団体の日本海洋散骨協会は、陸地から1海里(約1.85km)以上離れることや、遺骨を1〜2mm程度に砕くことを自主基準にしています。
自治体によってはさらに沖合を求める地域もあります。撒ける場所の決まりは「散骨できる場所はどこ?」で詳しく取り上げました。
山林散骨は土地の持ち主と条例の確認が前提
山林散骨は、粉状にした遺骨を山林にまく方法です。どの山でもできるわけではなく、土地の持ち主の承諾が前提です。散骨用の区域を設けて受け付ける業者もあります。
散骨を条例で制限している自治体もあり、北海道長沼町のように墓地以外での散骨を禁じる町もあるため、事前の確認が欠かせません。東京都保健医療局も、山での散骨は土地の持ち主や近隣の人とのトラブルが起きた例があると注意しています。
また、遺骨を土に埋めると、散骨ではなく墓地以外への埋蔵とみなされるおそれがあります。「撒く」と「埋める」の違いには気をつけましょう。
空からの散骨や宇宙葬は限られた選択肢
ヘリコプターなどから遺骨をまく空からの散骨や、カプセルをロケットで打ち上げる宇宙葬、風船で上空まで運んでまくバルーン葬もあります。いずれも事業者のサービスとして紹介されていますが、国の基準がないため、実施の実績や記録の残し方を事業者に確かめて選ぶことになります。
航空機から物を落とすことは航空法で原則禁じられており、国土交通大臣への届出が前提です。ドローンを使う場合は国の承認が必要になります。
選ぶ人はまだ限られているため、検討するときは、実施の実績や遺骨の扱い、散骨した日時や場所の記録を事業者に確かめておきましょう。
自然葬の費用の目安
自然葬の費用は、樹木葬を求めた人の平均が70万円台という調査があり、公営の樹林墓地は1体数万円〜10万円程度、海洋散骨は委託なら数万円からが目安です。同じ自然葬でも、個別に区画を持つか、ほかの人と一緒に納めるかで費用は大きく変わります。
| 種類 | 費用の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 樹木葬の平均 | 71.7万円 | 鎌倉新書の調査 |
| 都立霊園の樹林墓地 | 1体9.5万〜11.2万円 | 東京都 |
| 千葉市の合葬式樹木葬 | 1体6万円 | 千葉市 |
| 海洋散骨・委託 | 5万〜10万円 | 週刊現代 2026年8月 |
| 海洋散骨・合同 | 10万〜20万円 | 週刊現代 2026年8月 |
| 海洋散骨・貸切 | 15万〜30万円 | 週刊現代 2026年8月 |
2026年10月時点の一般的な目安で、特定の霊園や業者の価格ではありません。都立霊園の樹林墓地は、遺骨を粉状にすると1体3.1万〜3.7万円の区分もあります。海洋散骨の貸切は、神戸新聞(2019年)では20万〜30万円とされています。粉骨や献花、乗船人数などで金額は変わるため、見積もりで内訳を確かめましょう。
樹木葬は平均71.7万円という調査
樹木葬の費用は、平均70万円台という調査が一つの目安になります。鎌倉新書が2026年1月に、2025年に同社のサイト「いいお墓」を通じてお墓を求めた1,267人へインターネットで行った調査では、樹木葬の平均は71.7万円で、一般墓の152.0万円の半分ほどでした。
同じ調査で、選ばれたお墓の種類は樹木葬が47.4%で最も多くなっています。ただし対象は同社のサイトの利用者に限られ、全国の平均ではない点に注意が必要です。
樹木葬の平均は、同社の調査で2023年の63.7万円から上がり続けています。個別の区画を持つか、合祀されるまでの期間がどのくらいかで金額が変わるため、年間の管理料の有無も含めて比べましょう。一度合祀した遺骨は取り出せない点も、あわせて確かめておきたいところです。
公営の樹林墓地は1体数万円からある
自治体が運営する公営霊園には、1体数万円〜10万円程度で使える樹林墓地があります。東京都の2026年度の募集では、多磨霊園の樹林型合葬埋蔵施設が1体9万5,000円、雑司ケ谷霊園が11万2,000円で、年間の管理料はかかりません。
千葉市の平和公園にある合葬式樹木葬墓地は、1体6万円で、遺骨を粉状にする場合は4万円です。どちらも、ほかの人の遺骨と一緒に埋める合葬の形で、一度合祀した遺骨は取り出せません。
公営は費用が抑えられる一方、住んでいる期間などの条件があり、抽選になることも多くあります。都立の樹林型合葬埋蔵施設は、2026年度の倍率が全体で3.1倍でした。
海洋散骨は委託なら数万円からが目安
海洋散骨の費用は、家族が船に乗らず業者に任せる委託なら数万円から、複数の家族が乗り合う合同で10万〜20万円、1家族で船を貸し切ると15万〜30万円が、報道で示される目安です。国や業界団体が示す相場はないため、ここに挙げた額は目安にとどめ、見積もりで比べることが前提になります。
散骨はお墓を持たないため、年間の管理料はかかりません。その代わり、遺骨を粉にする粉骨の費用や、献花、命日に海へ出る周忌クルーズなどが別料金になることがあります。
金額だけで比べず、何が含まれているかを2〜3社の見積もりで見比べると安心です。散骨業者の選び方は、次の記事をご覧ください。
散骨は許認可が不要な分、業者の実績・料金体系・契約内容の見極めが大切です。選び方の7つの基準を、チェックリスト付きで解説しています。
自然葬を選ぶ前に確かめたい4つのこと
自然葬を選ぶ前に、遺骨を後から取り出せるか、お参りの場所をどう残すか、遺骨を全部まくか一部を残すか、家族や親族が納得しているかの4つを確かめておくと、後悔を防ぎやすくなります。どれも、選んだ後では変えにくいためです。
| 確かめること | 樹木葬 | 散骨 |
|---|---|---|
| 遺骨の取り出し | 合祀の有無と時期で変わる | できない |
| お参りの場所 | 区画やシンボルツリー | 散骨した海など |
| 一部を残す方法 | 分骨して手元に残す | 一部だけまく |
| 家族と共有すること | 合祀の時期と条件 | 全部まくかどうか |
樹木葬の合祀の有無や時期、お参りの決まりは霊園ごとに違います。契約書と使用規則で確かめておきましょう。
遺骨を後から取り出せるかどうか
散骨した遺骨は、取り戻すことができません。樹木葬も、ほかの人の遺骨と一緒に埋める合祀をした後は、遺骨を取り出せなくなります。
樹木葬には、最初から合祀する区画、一定期間は個別に納めてから合祀する区画、合祀しない区画など、霊園によって形はさまざまです。鎌倉新書が2025年1月に、前年に「いいお墓」を通じて樹木葬を求めた715人へインターネットで行った調査では、「合祀されることはない」が40.0%、「最初から合祀される」が15.2%でした。
将来、別のお墓に移す可能性が少しでもあるなら、合祀されるまでの年数と、その間に取り出せるかを契約前に確認しておくと安心です。
お参りする場所をどう残すか
樹木葬は区画やシンボルツリーにお参りできますが、散骨にはお墓がないため、お参りの形を前もって考えておく必要があります。
日本海洋散骨協会のガイドラインは加盟事業者に、散骨した場所の情報を10年間保管し、遺族が希望すれば緯度・経度を記した散骨証明書を渡すよう求めています。命日などに散骨した海を訪ねる周忌クルーズを希望する人がいるためです。
樹木葬でも、お参りの決まりは霊園ごとに違います。都立小平霊園の樹林・樹木墓地は、毎月第4週の木曜日は管理のため墓域に入れないなど、独自の決まりがあります。
遺骨を全部まくか一部を残すか
自然葬は、遺骨のすべてを対象にする必要はありません。一部を手元に残したり、お墓に納めたりする選び方もできます。
厚生労働科学研究の研究班が2020年10〜11月に、自分や身近な人の散骨に関わった経験がある40〜89歳の500人へインターネットで行った調査では、「一部を散骨し、ほかはお墓などに納めた」が31.8%、「すべて散骨した」が27.8%でした。
迷ったら、一部を小さな骨壺に残しておくと、後から気持ちが変わっても手を合わせる場所を持てます。残し方は「手元供養とは?」をご覧ください。
家族や親族が納得しているか
自然葬は、本人の希望だけでなく、家族や親族の気持ちも大切にして決めたい選択です。先祖代々のお墓に入るのが当然と考える人や、お参りの場所がなくなることを寂しく感じる人もいるからです。
1級葬祭ディレクターがマネー現代(2026年8月)で紹介した仮名の事例では、樹木葬の区画を契約していた夫婦の死後、契約どおり合祀されることになり、親族が強く反対しました。一度合祀した遺骨は取り出せないため、合祀の時期や散骨の範囲は、契約の前に家族と共有しておきましょう。
どちらが正しいということではありません。本人の希望をエンディングノートなどに書き残し、家族と話し合う時間を持つことが、後悔を減らす近道です。
墓じまいした遺骨を自然葬に移す手続き
墓じまいした遺骨を樹木葬に移すなら、今のお墓がある市区町村で改葬許可を受ける必要があります。散骨する場合の手続きは市区町村によって扱いが違うため、事前に確認しましょう。
樹木葬に移すなら改葬許可が必要
樹木葬は法律上のお墓なので、今のお墓から遺骨を移すことは「改葬」にあたり、今のお墓がある市区町村長の許可が必要です(墓地埋葬法5条)。
申請には、改葬許可申請書のほか、今の墓地の管理者が出す「遺骨を埋蔵していることの証明」が要ります。申請する人がお墓の使用者でない場合は、使用者の承諾書も必要です(同法施行規則2条)。
移し先の霊園が出す受入証明書を求める市区町村もあるので、窓口で必要な書類を確かめましょう。申請書の書き方は、「改葬許可証の申請書の書き方」もあわせてご覧ください。
散骨するなら市区町村に取扱いを確認
お墓から遺骨を取り出して散骨する場合の手続きは、市区町村によって扱いが違うのが実情です。東京都保健医療局も、散骨のために取り出す場合は区市町村により取扱いが異なるとして、必要な手続きを確認するよう案内しています。
改葬の定義は「ほかのお墓や納骨堂に移す」ことなので、散骨はこれにあたらないとする説明もあります。ただし、墓地の管理者が遺骨を取り出す際に書類を求めることもあるため、自己判断で進めないことが大切です。
今のお墓がある市区町村の窓口と墓地の管理者の両方に、散骨したい旨を伝えて確認しておきましょう。
移し先を先に決めてから手続きを進める
墓じまいから自然葬へ移すときは、移し先の霊園や散骨業者を先に決めてから、役所の手続きに入るのが基本の順番です。改葬許可の申請書には、移す先の場所を書く欄があるためです。
そのうえで、お寺や霊園への相談、閉眼供養、遺骨の取り出し、墓石の撤去と区画の返還へと進めましょう。都立霊園には、お墓を継ぐ人がいない使用者が区画を返し、遺骨を都の合葬式墓地へ移す「施設変更制度」もあります。移し先は樹林墓地ではなく合葬式の墓地で、一度合祀した遺骨は取り出せません。
墓じまい全体の流れは「墓じまいとは?8つの手順と費用」をご覧ください。
自然葬のよくある質問
自然葬を考えるときによく出る疑問に、法律や公的な情報をもとに短く答えます。
自然葬は法律違反になりませんか
許可を受けた墓地で行う樹木葬なら、法律上の問題はありません。申し込む前に、その霊園が墓地の許可を受けているかを確かめましょう。散骨は禁じる国の法律はありませんが、節度をもって行うことが前提で、条例で場所を制限する自治体もあります。散骨の法律の考え方は「散骨とは?」をご覧ください。
宗教や宗派の決まりはありますか
宗教によって考え方は違います。たとえばカトリック教会は、遺灰を海や山にまく散骨を認めていません(教皇庁教理省の指針・2016年)。信仰がある場合は所属するお寺や教会に先に相談し、お寺の墓地から移すなら閉眼供養や檀家をやめる手続きも確かめましょう。
生前に申し込むことはできますか
樹木葬は、生前に区画の使用権を取得できる霊園があり、都立霊園の合葬施設にも生前申込の区分があります。散骨は、亡くなった後に実施してくれる人や業者を、生前の契約やエンディングノートで決めておくことが大切です。
近くで自然葬ができる場所の探し方は
樹木葬は、お住まいの地域の霊園から探せます。公営の樹林墓地は自治体の募集要項に条件と時期が載っているので、市区町村や都道府県のサイトで確かめましょう。散骨は、日本海洋散骨協会の加盟事業者などから、出航する港と実績で探し、散骨したい地域の条例も確かめます。
まとめ
自然葬は遺骨を自然に還す葬り方の総称で、樹木葬は許可を受けた墓地に埋めるお墓、散骨は粉にした遺骨を撒く方法です。費用は公営の樹林墓地なら1体数万円からあり、散骨や合祀した遺骨は取り出せません。
まずは家族と、遺骨を全部まくか一部を残すか、どこでお参りしたいかを話し合いましょう。樹木葬を考えるなら、近くの霊園を見学してから決められます。
当サイトでは全国7,000件以上の霊園・墓地・永代供養・樹木葬・納骨堂の情報を、都道府県・市区町村別に掲載しています。費用の目安やアクセスから比較できます。
墓じまいを検討中の方:地域別の墓じまい費用・補助金