「海にまいてほしい」という故人の願いを、業者に頼まず家族の手で叶えたい。そう思っても、散骨を自分でして法律に触れないか、遺骨を粉にする作業や船の手配まで家族でできるのか、不安が先に立つのではないでしょうか。業者に頼んだ場合と比べて、本当に負担が軽いのかどうかも、気になるところです。
そこで本記事では、自分で散骨するときに守ることと、家族の了解から当日の記録までの8つの手順をお伝えします。海で行う場合に、船の手配で国の手続きが要るかどうかも分かるはずです。
あわせて、業者に頼む場合との費用と手間の違いや、残しておくべき書類も、同じ流れでまとめています。
散骨は自分でもできるが守るべきことがある
散骨は、業者に頼まず自分で行うこともできます。ただし、遺骨を粉にすること、まく場所の条例を確かめること、周りの人への配慮という守るべきことがあり、その中身は業者が行う場合と変わりません。
個人の散骨を禁じる国の法律はない
散骨を個人で行うことを禁じる国の法律はありません。東京都保健医療局は、国が「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない」との見解を示しているとし、法による手続きもないが、念のため地元の自治体に確認するよう勧めています。
ただし、どこでも好きにまいてよいわけではありません。1998年に旧厚生省の懇談会がまとめた報告書は、相当な節度をもって行う散骨は処罰の対象にできないと解されている、と整理しています。この「節度」の中身は、法律では決まっていません。
厚生労働科学研究の研究班が2020年10〜11月に、自分や身近な人の散骨に関わった経験がある40〜89歳の500人へインターネットで行った調査では、節度とは何かを第1希望で選んでもらうと、「故人の遺志」が74.8%でした。一方で、自治体や業界団体が求める節度は、場所や方法、周りの人への配慮を指します。
国の指針は業者向けでも守る中身は同じ
厚生労働省のサイトに載っている散骨のガイドライン(国の研究事業で取りまとめたもの)と、国土交通省の海上散骨のガイドライン(2023年)は、どちらも散骨を仕事にする業者に向けたものです。個人の散骨の手順を国が定めたものはありません。
それでも、ガイドラインが求める中身は、個人がまくときの目安にもなります。遺骨を形が分からない粉状に砕くこと、海岸から離れた海域で行うこと、自然に還らない物をまかないことです。
業界団体の日本海洋散骨協会も、「散骨をおこなうすべての方に」向けて、周りの人の宗教的な感情への配慮、漁船や海上交通の要所を避けること、遺骨の粉末化、環境への配慮の4つを求めています。
「何人も」と定める条例は個人にも及ぶ
散骨を規制する条例のうち「何人も」と定めるものは、業者だけでなく個人にも当てはまります。北海道長沼町や熊本県南阿蘇村の条例は「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」と定めており、自分の土地でもまくことはできません。
埼玉県秩父市や鹿児島県伊佐市のように、隣の土地の持ち主の同意や境界からの距離などの条件を満たし、事前に届け出る(秩父市)か承認を受ける(伊佐市)場合に限って認める市もあります。静岡県伊東市の指針は、海で散骨する個人と業者の両方に、伊東市内の陸地から6海里(約11.11km)以内ではまかないよう求めています。
自治体ごとの規制の一覧は「散骨できる場所はどこ?」にまとめました。自分で行う場合ほど、まく場所のルールは自分で確かめなければなりません。
自分で散骨するときの手順
自分で散骨するときは、家族の了解を得てから、場所の確認、粉骨、移動の手配、当日の散骨、記録の順に進めるのが基本です。全体を8つのステップに分けると、次の表のとおりです。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 故人の意思と家族の了解を確かめる |
| 2 | 全部まくか一部を残すかを決める |
| 3 | まく場所の条例と指針を調べる |
| 4 | 火葬許可証などの書類を確かめる |
| 5 | 遺骨を粉にして小分けにする |
| 6 | 海なら船を手配する |
| 7 | 当日は花びらだけを手向ける |
| 8 | まいた日時と場所を記録する |
ステップ4と8は後の章「書類と後から困らないための備え」、ステップ6は「海で自分で散骨するときの船の手配」で詳しく取り上げました。
故人の意思と家族の了解を確かめる
最初に、故人が散骨を望んでいたかと、家族や親族が了解しているかを確かめます。日本海洋散骨協会が加盟事業者に課しているガイドラインも、業者が散骨を受けるには、本人の生前の希望か、葬儀を主宰する立場の人からの申し込みが必要だとしています。
散骨は、まいた遺骨を取り戻せません。全部をまくか、一部を手元やお墓に残すかも、このときに決めておきましょう。厚生労働科学研究の研究班が2020年10〜11月に、自分や身近な人の散骨に関わった経験がある40〜89歳の500人へインターネットで行った調査では、「一部を散骨し、ほかはお墓などに納めた」が31.8%、「すべて散骨した」が27.8%で、一部だけまいた人のほうがやや多い結果でした。
意見が分かれたら、一部だけをまく形にすると、手を合わせる場所を残したい家族の気持ちにも応えやすいでしょう。
まく場所の条例と指針を調べる
まく場所を決めたら、その市区町村に散骨の条例や指針がないかを調べます。東京都は地元の自治体への確認を勧め、長野市も散骨する市区町村へ事前に確認するよう案内しています。
あわせて、避けるべき場所にかからないかを確かめましょう。海岸や浜辺、防波堤からまくこと、川・湖・沼、他人の土地、公園などの公共の場所は、自分で行う場合も避けましょう。
海なら、漁場や養殖場、船の通り道の近くも避けます。場所ごとの可否と理由は「散骨できる場所はどこ?」もあわせてご覧ください。
遺骨を粉にして小分けにする
遺骨は、骨の形が分からない程度の粉にしてからまきます。厚生労働省のサイトに載っているガイドラインは形が分からないよう粉状にすることを求め、日本海洋散骨協会の自主基準は1〜2mm程度を目安にしています。
粉骨に資格は要らず、自分で砕くことも可能です。ただし時間と力が要り、気持ちのうえでもつらい作業です。お墓から出した遺骨は湿気を含んでいることが多く、乾かしてから砕く必要があります。粉骨だけを業者に頼む方法もあります。
粉にした遺骨は、水に溶ける紙袋に小分けにしておくと、当日に扱いやすいでしょう。粉骨のやり方と費用は、「粉骨とは?」をご覧ください。
当日は平服で花びらだけを手向ける
当日は、喪服ではなく平服で出かけ、粉にした遺骨や遺影、献酒は袋に入れて持ち運びます。日本海洋散骨協会のルールブックは、船着き場などで周りの人を驚かせない配慮として、こうした服装や持ち運び方を勧めています。
手向ける花は、包装紙や茎、葉を取り、花びらだけにしましょう。金属やビニール、プラスチック、ガラスなど自然に還らない物はまきません。静岡県伊東市の指針も、散骨する人にこの点を求めています。
自分でまくときに起きやすい思い違いは「海洋散骨のトラブルと後悔を防ぐには」で取り上げています。出かける前に一度目を通しておくと安心です。
海で自分で散骨するときの船の手配
海で自分で散骨するときは、陸から離れた沖合まで船で出るのが基本です。自分の船に家族を無償で乗せるなら海上運送法の手続きは要りませんが、釣り船を借りる場合や、お礼を払って船に乗せてもらう場合は、その船が登録を受けているかを確かめましょう。
| 船の手配のしかた | 海上運送法の手続き |
|---|---|
| 自分の船に家族や友人を無償で乗せる | 不要 |
| 知人が友人として無償で乗せてくれる | 不要とされる |
| 釣り船を散骨のために借りる | 登録が要る場合がある |
| 散骨業者や海上タクシーの船 | 許可か登録を受けた船 |
| フェリーや遊覧船からまく | まかない |
国土交通省の東北運輸局と九州運輸局の資料をもとにした整理です。散骨に当てはめた国の個別の判断は示されていないため、迷ったら地方運輸局に相談しましょう。
自分の船に家族を無償で乗せる場合
自分のプレジャーボートなどに、家族や友人を無償で乗せて散骨に出る場合は、海上運送法の手続きは要りません。国土交通省東北運輸局の資料は、身内や友人、隣人を無償で運ぶことを「自己の用に供する運送」として、海上運送法の対象外としています。
ただし、船を操縦するには小型船舶操縦免許が必要です。散骨する海域まで安全に行き来できるか、天気や波の予報もあわせて確かめておきましょう。
まく場所の目安は、日本海洋散骨協会の自主基準で、人が立ち入れる陸地から1海里(約1.85km)以上です。伊東市のように市内の陸地から6海里以上を求める地域もあるため、まく海域に面した自治体の指針も確かめましょう。
釣り船や借りる船は登録を確かめる
釣り船を借りたり、お礼を払って船に乗せてもらったりして散骨に出るときは、その船が海上運送法の登録を受けているかを確かめます。九州運輸局のリーフレットは、他人の求めに応じて人を運ぶ場合、釣りや瀬渡し以外の目的なら料金を取らなくても一般不定期航路事業の登録が要るという整理です。知人が友人として無償で乗せてくれる場合は、手続き不要とされています。
この登録制は2025年4月に始まり、それまでの届出制から変わりました。以前から届け出ていた事業者には、2027年3月末までの経過措置があります。登録を受けずに人を運ぶ営業には、1年以下の拘禁刑か150万円以下の罰金などの罰則も定められました。
頼む前に「海上運送法の登録を受けていますか」と聞けば、相手も判断しやすくなります。釣り船の遊漁船業の登録は、これとは別の制度です。登録の要否が分からないときは、地方運輸局に相談するのが近道です。
乗る人は全員ライフジャケットを着る
小型の船で散骨に出るときは、乗る人全員がライフジャケットを着ます。国土交通省は省令を改正し、2018年2月1日から、原則としてすべての小型船舶の乗船者にライフジャケットの着用を義務づけました。
散骨のときは、船べりから身を乗り出して遺骨や花びらをまくことになります。高齢の家族や子どもが乗る場合は特に、船長の指示に従い、無理のない姿勢でまきましょう。
フェリーや遊覧船など一般の乗客がいる船からまくことは、日本海洋散骨協会もはっきり避けるよう求めています。一般の乗客がいるうえ、船の持ち主から損害賠償を求められる可能性があるためです。
自分で行う場合と業者に頼む場合の比較
自分で行うと業者のプラン料金はかかりませんが、粉骨・場所の確認・船の手配を自分たちで担うことになります。業者に頼む場合は、家族が乗らない委託なら5万〜10万円ほどが報道で示される目安で、手間は大きく減るでしょう。
| 項目 | 自分で行う | 業者に頼む |
|---|---|---|
| 粉骨 | 自分で砕くか業者に頼む | プランに含まれる例がある |
| 場所の確認 | 自分で調べる | 業者の決めた海域で行う |
| 船 | 自分で手配する | 業者の船を使う |
| 散骨の記録 | 自分で残す | 希望すれば証明書を受け取る |
散骨証明書は、厚生労働省のサイトに載っているガイドラインが業者に交付を求めており、日本海洋散骨協会は遺族が希望すれば緯度・経度を記した証明書を出すとしています。
自分で行う場合にかかるお金と手間
自分で行う場合の主な費用は、粉骨を頼むならその料金、船を借りるならその代金、花びらや水に溶ける袋などの実費です。自分で砕き、自分の船を使えば、費用は燃料などに限られます。
粉骨業者5社が2026年10月時点で公開している料金(郵送・機械で砕く場合)では、骨壺7寸前後で約1万6,500円〜4万1,800円、お墓から出した遺骨は洗浄・乾燥が加わり約2万〜4万7,300円でした。船を借りる費用は、国や業界団体が示す目安がないため、頼む先に見積もりを取りましょう。
お金の代わりにかかるのが手間です。条例の確認や船の手配、粉骨、当日の準備を、すべて家族で担うことになります。
業者に頼む場合の費用の目安
業者に頼む場合の費用は、週刊現代(2026年8月)の記事では、家族が乗らない委託が5万〜10万円、複数の家族が乗り合う合同が10万〜20万円、1家族で船を貸し切ると15万〜30万円が目安とされています。神戸新聞(2019年)は、貸切を20万〜30万円としていました。
業者の船は、海上運送法の許可か登録を受け、船客の損害賠償保険に入ることが国土交通省のガイドライン(2023年)で整理されています。頼むときは、この2点を確かめましょう。
委託の場合は、散骨に立ち会えません。前の章で紹介した厚生労働科学研究の調査(2020年10〜11月・インターネット)では、業者などに任せて見送らなかった145人のうち79.3%が「特に確認しなかった」と答えています。証明書や報告の有無は、契約前に確かめておくと安心です。
粉骨だけや委託だけを頼む方法もある
全部を自分でするか、全部を業者に任せるかの二択ではありません。粉骨だけを業者に頼み、当日は家族で船を手配してまく方法や、遠方の海だけ業者の委託散骨を使う方法もあります。
特に、お墓から出した遺骨や、船を持っていない場合、まきたい海が遠い場合は、手間のかかる部分だけを業者に任せると負担が軽くなります。
業者を選ぶときは、許可や登録、料金の内訳、証明書の有無を比べることが大切です。比べ方は、次の記事をご覧ください。
散骨は許認可が不要な分、業者の実績・料金体系・契約内容の見極めが大切です。選び方の7つの基準を、チェックリスト付きで解説しています。
書類と後から困らないための備え
法律で決まった届出や許可はなく、秩父市や伊佐市のように条例で届出・承認が要る自治体を除けば役所へ出す書類はありません。そのうえで、火葬許可証は捨てずに保管し、お墓から出す遺骨は市区町村と墓地の管理者に手続きを確かめます。まいた日時と場所も記録しておくと、後からお参りに行けるはずです。
火葬許可証は捨てずに保管する
火葬の後に返される、火葬済みの記入がある火葬許可証(一般に「埋葬許可証」と呼ばれる書類)は、散骨した後も捨てずに保管します。墓地埋葬法が定めているのは、お墓や納骨堂に納めるときに管理者へ出すことで、散骨のときに出す先は決まっていません。
それでも保管が必要なのは、遺骨の一部を残して将来お墓や納骨堂に納めるときに使うからです。粉骨を業者に頼むときも、写しを求められることがあります。
なくした場合は、死亡届を出した市区町村で再交付を受けられます。長野市の場合、火葬後の再交付は1通300円です。骨箱や骨壺の中に入っていることも多いので、まず確かめてみましょう。
お墓から出す遺骨は市区町村と管理者に確認
お墓から遺骨を取り出して散骨する場合は、お墓のある市区町村と墓地の管理者の両方に、手続きを確かめます。扱いが自治体によって違うためです。
総務省東北管区行政評価局の資料は、散骨する場合は改葬許可は必要ないという厚生労働省の考えを紹介しています。一方、東京都は区市町村により取扱いが異なるとしており、三重県伊勢市は2019年に、散骨のための改葬許可は原則出せないと回答しました。
墓地の管理者から、後で問題が起きても迷惑をかけないという念書を求められることもあります。墓じまい全体の手続きは「墓じまいの手続きと必要書類」をご覧ください。
まいた日時と場所を記録しておく
自分で散骨したときは、まいた日時と場所を記録しておきましょう。業者に頼んだ場合は散骨証明書を受け取れることがありますが、自分で行う場合は記録も自分で残す必要があります。
スマートフォンの地図アプリで現在地の緯度・経度を控え、写真と一緒に保存しておけば、命日に同じ海へ出向いて手を合わせられます。家族にも記録の場所を伝えておくと安心です。
まいた後も手を合わせる場所がほしいなら、遺骨の一部を手元に残す方法もあります。残し方は「手元供養とは?」をご覧ください。
散骨を自分でするときのよくある質問
庭や人目につかない場所でまけるか、ペットと一緒にまけるかなど、よく出る疑問に答えます。
人目につかないようこっそりまいてもよいですか
人目に配慮することは大切ですが、条例で禁じられた場所や、他人の土地、海岸などでまくことは、見られなくても避けるべきです。場所のルールを確かめたうえで、目立たない平服や持ち運び方で周りに配慮しましょう。
自宅の庭にまいてもよいですか
国の法律で一律に禁じられてはいませんが、北海道長沼町のように自分の土地でも禁じる自治体があります。東京都は、風で飛んだり近所の人が気分を害したりするおそれを指摘しました。埋めるのは、墓地以外での埋蔵を禁じる墓地埋葬法に反します。上から土をかぶせることも埋蔵に当たるというのが、業界団体(全日本墓園協会)の説明です。
ペットの遺骨と一緒にまけますか
国は2004年の答弁書で、動物には墓地埋葬法は適用されないとしています。一緒にまく場合も、場所の条例の確認や粉骨、周りへの配慮は人の遺骨と同じように行いましょう。業者に頼むなら、受け付けているかを先に確かめてください。
自分で行うのが向かないのはどんな場合ですか
船を持っていない、まきたい海が遠い、お墓から出した湿った遺骨がある、条例などを調べる時間が取れない、といった場合は、全部または一部を業者に頼むほうが負担を減らせます。家族の意見がまとまらないときも、急いで自分たちだけで進めないことが大切です。
まとめ
散骨は自分でも行えますが、遺骨を粉にする、まく場所の条例を確かめる、自然に還らない物をまかない、という守ることは業者と同じです。海なら、借りる船が海上運送法の登録を受けているかも確かめましょう。
まずは家族で、全部まくか一部を残すかを話し合ってください。一部をお墓や納骨堂に納めるなら、供養先もあわせて探せます。
当サイトでは全国7,000件以上の霊園・墓地・永代供養・樹木葬・納骨堂の情報を、都道府県・市区町村別に掲載しています。費用の目安やアクセスから比較できます。
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