「墓じまいを決めたものの、役所に何を出せばいいのか分からない。お寺や霊園にはどう伝えればいいのだろう」。書類の種類も、もらう先も、出す順番も初めてのことばかりで、何度も現地へ通うことになるのではと不安になる方は多いはずです。名義が亡くなった親のままだったり、お墓に誰が入っているか分からなかったりと、自分の家ならではの事情も重なるでしょう。
そこで本記事では、墓じまいで出す書類を、誰からもらってどこへ出すかの順に整理します。役所での申請の進め方から、遠方でも郵送で済ませられる場合まで分かるので、最初にどこへ連絡すればよいかが見えてくるはずです。
あわせて、墓地の種類ごとの返還の手順や、名義・埋蔵証明書・散骨など迷いやすいケースの対処も同じ流れで解説します。
墓じまいの手続き|誰に何を出すかの全体像
墓じまいの手続きは、役所での改葬許可の申請と、今の墓地への区画の返還の2本立てです。書類は新しい納骨先、今の墓地、役所の間を順に渡っていくので、渡す順番を押さえれば迷いにくくなります。
役所の手続きは改葬許可の申請が中心
墓じまいで役所に出すのは、遺骨を別のお墓や納骨堂へ移すための改葬許可の申請です。墓地、埋葬等に関する法律は、遺骨を移す人に市区町村長の許可を受けるよう定めています。
この許可は遺骨を動かすことへの許可で、墓石の処分や区画を返すことまでは含みません。長野市は2026年7月のリーフレットで、改葬許可は墓石の処分や墓地の使用権の抹消を許可するものではないと案内しています。
役所の手続きと墓地の手続きは別物だと知っておくと、「役所に出したのに終わらない」という戸惑いを防げます。墓じまい全体の流れは墓じまいとは?8つの手順と費用、遺骨の移し先までやさしく解説で紹介しています。
今の墓地には区画の返還を届け出る
役所とは別に、今の墓地の管理者へ区画を返す手続きが要ります。公営霊園なら霊園の窓口、民営霊園なら管理事務所、寺院墓地なら住職が相手です。
区画を返すときは、墓石を撤去して更地に戻すのが一般的な決まりです。返し方や払ったお金の扱いは、墓地ごとの規則で決まります。
返し方や費用の扱いは墓地ごとの規則で決まるため、墓じまいを決めたら早めに管理者へ連絡し、手順を聞いておきましょう。墓地の種類ごとの違いは後の章で紹介します。
書類は5つの相手の間を順番に渡る
墓じまいの書類に関わるのは、役所、今の墓地の管理者、新しい納骨先、お墓の名義人、撤去工事をする石材店の5者です。主な書類のもらう先と出す先を表にまとめました。工事の届けは、神戸市立墓園のように撤去工事の前に出す決まりの墓地の例です。
| 書類 | もらう先 | 出す先 |
|---|---|---|
| 受入証明書 | 新しい納骨先 | 役所 |
| 埋蔵証明書 | 今の墓地の管理者 | 役所 |
| 名義人の承諾書 | 今のお墓の名義人 | 役所 |
| 改葬許可申請書 | 役所の窓口・ホームページ | 役所 |
| 改葬許可証 | 役所 | 今の墓地で提示し新しい納骨先へ |
| 返還届 | 今の墓地の窓口 | 今の墓地の管理者 |
| 工事の届け | 石材店・使用者が作成 | 今の墓地の管理者 |
承諾書は、名義人以外が申請するときだけ必要です。受入証明書は、長野市や練馬区のように新しい納骨先の使用許可証や契約書で代えられる自治体もあります。窓口では本人確認書類を、代理で申請するなら委任状も必要です。
役所で行う改葬許可の申請
改葬許可は、今住んでいる市区町村ではなく、今のお墓がある市区町村に申請するものです。手数料は無料の自治体もあれば、遺骨1体や1通ごとに数百円かかる自治体もあり、許可証が出るまではその場から2〜3週間まで幅があります。
申請先は今のお墓がある市区町村
改葬許可の申請先は、遺骨が今ある場所の市区町村です。墓地、埋葬等に関する法律が、改葬の許可は遺骨のある地の市区町村長が行うと定めているためです。
担当する窓口の名前も自治体ごとに異なり、統一されていません。戸籍の担当、保健や衛生の担当、霊園の担当などに分かれているため、お墓のある市区町村のホームページで「改葬」と検索すると早くたどり着けます。
申請書は窓口でもらえるほか、ホームページから印刷できる自治体もあります。2026年に様式を改めた自治体もあるので、手元の古い用紙ではなく最新の様式を使いましょう。
申請できる人と本人確認の書類
誰が申請者になれるかの書き方は、自治体によって違います。目黒区は今の墓地の使用者、川口市や練馬区は新しい納骨先の使用者、横浜市は改葬を行おうとする人としており、豊中市は亡くなった人の親族に限っています。
今のお墓の名義人以外が申請するときに名義人の承諾書が要るのは、施行規則の定めです。練馬区や文京区のように、新しい納骨先の名義人の承諾書を求める自治体もあります。
窓口では本人確認書類の提示が必要です。長野市は顔写真付きの公的な書類なら1点、写真がなければ2点を求めています。自分が申請者になれるかと持ち物を、事前に窓口のページで確かめておきましょう。
手数料と許可が出るまでの日数
手数料と許可証が出るまでの日数は、自治体ごとに次のように違います。いずれも2026年10月時点で各自治体のページに書かれている内容です。
| 自治体 | 手数料 | 許可証が出るまで |
|---|---|---|
| 川口市 | 無料 | 不備がなければその場 |
| 長野市 | 無料 | 1週間程度 |
| 豊中市 | 1通450円 | 約1週間 |
| 尼崎市 | 無料 | 2〜3週間 |
| 静岡市 | 遺骨1体300円 | 記載なし |
長野市は、書類に不備があると1か月ほどかかる場合があると案内しています。新しい納骨先での納骨日が決まっているなら、少なくとも1か月ほどの余裕をもって申請すると安心です。
遠方なら郵送や代理での申請も
お墓が遠くても、郵送で申請できる自治体があります。川口市、長野市、静岡市、豊中市、尼崎市などは郵送での申請を案内しており、長野市はマイナンバーカードを使ったオンライン申請にも対応しています。
郵送では、申請書と必要書類、本人確認書類のコピー、切手を貼った返信用封筒を送るのが一般的な形です。郵送で手数料を払うときは、静岡市や豊中市のように郵便局の定額小為替を同封する決まりの自治体もあります。
家族などに頼むなら、委任状を付けて代理で申請できる自治体もあります。川口市は、不備があると交付できないことがあるとして事前の電話確認を勧めているため、郵送の前に一度問い合わせておくと手戻りを防げるでしょう。
墓地の種類ごとの返還の手続き
区画の返還の手続きは、墓地の種類によって相手と決まりが違います。公営霊園は返還届を出して更地に戻し、民営霊園は管理事務所に工事の決まりを確かめ、寺院墓地は住職への相談から始めるのが基本の流れです。
公営霊園は返還届を出して更地に戻す
公営霊園では、霊園の窓口に返還の届けを出し、自分の費用で墓石を撤去して更地に戻します。仙台市営墓地は「霊園使用廃止届」を出し、更地にしたうえで墓園管理事務所長の更地証明を受ける決まりです。
払った使用料は原則として戻りません。ただし仙台市は使用許可から3年以内の返還なら半額を返し、岡山市は市が整備した一部の墓地で遺骨を入れていない区画なら使用料の半額を返します。神戸市立墓園は、届け出た年度の使用料を納める決まりです。
工事の業者は、神戸市や名古屋市のように自分で選べると明記している公営霊園もあります。届けの名前や更地の基準は霊園ごとに違うため、まず管理事務所に返還の手順を聞いておきましょう。
民営霊園は管理事務所に工事の決まりを確認
民営霊園では、管理事務所に返還を申し出て、契約や管理規則に沿って手続きを進めます。2000年に国が示した標準的な契約のひな形では、使用者は書面でいつでも契約を解除でき、払った使用料や管理料は原則として戻らないとされています。
民営霊園では、工事をする石材店が決まっている場合もある点に注意が必要です。国の指針は墓石を建てる工事について、業者を指定して選ぶ余地をまったく奪う契約は適切でないとしています。撤去工事の業者を指定できるかどうかは各霊園の使用契約や管理規則で決まるため、まず契約書と管理規則で指定の有無と範囲を確かめましょう。
管理事務所には、返還の届け方、指定の石材店の有無、更地にする範囲、払ったお金の扱いの4点を最初に聞いておくと、見積もりや日程の段取りが組みやすくなります。
寺院墓地は住職への相談から始める
寺院墓地では、まず住職に墓じまいの意向を伝えて相談します。埋蔵証明書を書くのも、閉眼供養などの儀式を頼むのも住職のため、関係を保ったまま進めることが手続きを円滑にする近道です。
寺院墓地の墓じまいは、お寺の檀家(浄土真宗では門徒)をやめる離檀を伴うことが多く、護持会費の精算や離檀料の話が出てくることがあります。離檀料はお寺へのお礼として慣習的に払われるもので、明確な基準はないというのが国民生活センターの2022年6月の説明です。
全日本墓園協会の横田睦専務理事は「国民生活」2025年12月号で、お寺に出入りする石材店に撤去を任せると高い工事費を求められることもありうると指摘しています。工事の見積もりは内訳まで確かめましょう。離檀料については離檀料の相場はいくら?支払い義務と高額請求の対処法を解説で詳しく紹介しています。
墓じまいの費用相場や自治体の補助金は、地域によって大きく変わります。当サイトでは市区町村別に、墓じまいの平均費用と最新の補助金情報をまとめています。
業者選びに迷ったら:墓じまい代行サービスの選び方
手続きで迷いやすい4つのケース
名義人が亡くなっている、埋蔵証明書が出ない、遺骨の数や名前が分からない、散骨や手元供養にする、の4つは手続きが変わりやすい場面です。どのケースも自己判断で進めず、墓地の管理者と市区町村の窓口に先に相談すると手戻りを防げます。
お墓の名義人が亡くなっているとき
名義人が亡くなっているときの段取りは、墓地によって違います。名古屋市の八事霊園と愛宕霊園は、名義人が亡くなったままでは返還できないとして、名義の承継と返還を同時に申請する形です。一方、神戸市立墓園は、代理人が申立書や戸籍謄本を付けて返還を届け出られます。
改葬許可の側でも、名義人以外が申請するには名義人の承諾書が必要です。名義人が亡くなっていて承諾書が作れない場合は、名義を継いで自分が名義人になるか、尼崎市のように市区町村に相談するよう案内している例もあります。
名義の承継、返還、改葬許可のいずれでも戸籍謄本を求められる場合があるため、まず墓地の管理者に順番を聞き、必要な戸籍をまとめて取り寄せると手間を減らせます。
埋蔵証明書を出してもらえないとき
お寺などが埋蔵証明書を出してくれない場合でも、改葬をあきらめる必要はありません。法律の施行規則は、特別な事情があれば市区町村長が認める書面で代えられると定めています。
総務省東北管区行政評価局が2026年1月に公表した資料では、お寺が証明書の作成を拒んだ例で、墓地の使用許可証、墓石や墓誌に刻まれた名前の写真、戸籍謄本などを確かめて改葬を許可した市町村がありました。管理者が亡くなり後任が決まらない例でも、お墓の写真と戸籍で許可されています。
どの書類で代えられるかは市区町村が判断します。厚生労働省も2026年1月に、お墓の写真や事情を書いた申述書などを代わりの書面の例として自治体に示しているため、窓口でその旨を伝えて用意する書類を相談しましょう。
遺骨の数や名前が分からないとき
古いお墓では、何人分の遺骨があるのか、誰の遺骨なのか分からないことがあります。申請書の分からない欄は「不詳」や「不明」と書けると、長野市や熊谷市、静岡市、尼崎市は案内しています。
申請の前に、墓誌や墓地の使用許可証、管理者の記録で、誰が何人納められているかを確かめておきましょう。名古屋市や神戸市の公営霊園のように、管理事務所に納骨の届けがない遺骨は改葬の申請ができず、先に納骨の届けが要る例もあります。
遺骨1体ごとに申請書を出すか、まとめて1通で出せるかも自治体によって違います。遺骨の数がはっきりした段階で、窓口に出し方を確かめておくと安心です。
散骨や手元供養にするとき
遺骨を取り出して散骨したり、自宅に置いたりする場合は、改葬許可は不要というのが国の考え方です。総務省東北管区行政評価局の資料も、厚生労働省の見解としてそう記しています。
ただし、散骨のために取り出すときの扱いは区市町村で違うと東京都保健医療局は案内し、静岡市は今の墓地の管理者に問い合わせるよう案内しています。取り出す前に、今の墓地の管理者、お墓のある市区町村、散骨事業者の3か所に必要な書類を聞きましょう。
守口市は、自宅に移した遺骨をさらに別の墓地へ納めるときは改葬許可が必要になると案内しています。札幌市は、将来別の墓地に納めるときに備え、今の墓地の管理者から埋蔵証明書をもらって遺骨と一緒に保管しておくよう案内しています。散骨は一度撒くと遺骨を取り戻せないため、親族と話し合ってから決めましょう。散骨する場所によっては、条例で散骨を制限している自治体もあります。散骨の方法は散骨とは?違法にならない方法・種類・費用相場をやさしく解説で紹介しています。
墓じまいの手続きでよくある質問
役所に行く回数、2026年の制度の改正、同じお寺の中での移動の3つについて答えます。
役所には何回行く必要がありますか
申請と受け取りの2回が目安です。川口市のようにその場で許可証が出る自治体なら1回、郵送で申請と受け取りができる自治体なら出向かずに済みます。書類に不備があると、出し直しで回数が増えることがあります。
2026年の改正で手続きは変わりましたか
必要な書類や手順は変わっていません。2026年4月施行の施行規則の改正で変わったのは、改葬許可証の書式が縦書きから横書きになった点などです。ただし船橋市のように申請書の様式を改めた自治体もあるので、最新の様式を使いましょう。
同じお寺の中で移すときも許可は要りますか
必要です。川口市や文京区、名古屋市は、同じ墓地の中で遺骨を移す場合も改葬に当たると案内しています。一方、船橋市は、お墓を改修して同じ区画に納め直す場合は改葬に当たらないとしています。
まとめ
墓じまいの手続きは、今のお墓がある市区町村での改葬許可の申請と、今の墓地への区画の返還の2本立てです。受入証明書と埋蔵証明書をそろえて申請し、許可証を今の墓地で見せて遺骨を取り出し、新しい納骨先に出すのが基本の順番です。
まずはお墓のある市区町村のホームページで改葬の窓口と様式を確かめ、今の墓地の管理者に返還の手順を聞いてみましょう。新しい納骨先は、霊園・供養先の検索から探せます。
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